天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

沢瀉

近所のたんぼにて

 おもだか。水田や浅い池にはえオモダカ科の多年草で、やじり形の柄の長い葉が特徴。秋にかけて白色三弁の花をつける。日本全土、東南アジアに分布。


  鷺に似てひと花すいと水をぬく青藺のなかの
  おもだかの花         佐佐木信綱
                       
  五月雨の築地くづれし鳥羽殿のいぬゐの池に
  おもだかさきぬ        与謝野晶子
                       
  ほのかなる沢瀉の花はわが妻の身ごもるよりも
  あはれなるかな        結城哀草果
                       
  おのづから水のほとりに歩むわれ眼に異国の
  おもだかの花         玉城 徹
                       
  沢瀉は水の花かもしろたへの輪生すがし雷遠くして
                 小中英之


  「わだばゴッホになる」と決意す。ころびたる近眼の見し
  おもだかの花


 故棟方志功は、この花が大好きだった。青森に住む若き日、道を歩いていて、近眼のため路傍の沼地にころがりこんだ。彼の目の前に、おもだかの花が咲いていた。ゴッホになるんだ、と志功が決意した瞬間だった。この逸話は、青森の棟方志功記念館を訪ねた折に知った。