天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鶏頭

二宮町吾妻山にて

 トサカケイトウともいう。熱帯アジア原産のヒユ科一年草。鶏冠状の花序の色には、よく見かける赤以外にも黄、白、桃などがある。紛らわしいものに、インド原産、ヒユ科一年草の葉鶏頭がある。鎌柄(かまつか)、雁来紅(がんらいこう) などの呼び名がある。俳句では両者とも秋の季語になっている。右の写真のように見れば違いがわかる。(上:鶏頭、下:葉鶏頭)


      鶏頭の十四五本もありぬべし    正岡子規
      鶏頭を三尺離れもの思ふ      細見綾子

  鶏頭は冷たき秋の日にはえていよいよ赤く冴えにけるかも
                       長塚 節
  ひいやりと剃刀ひとつ落ちてあり鶏頭の花黄なる庭先
                       北原白秋
  つかも間の夕映なるも欠落の記憶をつなぐ鶏頭の花
                       山名康郎
  鶏頭は紅しといへど襞なせる影濃く秋のこころのやうな
                       蒔田さくら子
  
      葉鶏頭のいただき踊る驟雨かな   杉田久女
      かまつかや坐りくぼめし轆轤の座  本田静江

  雁来紅燃えのきはまり地殻よりわななく声のまっぴるまなり
                       加藤克己
  かまつかの静かに朱けの深みゆく夕べゆふべの君の恋ひしさ
                       馬場あき子
  丈高き葉鶏頭つづく庭ありてその紅はむしろ凄まし
                       蒔田さくら子