天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

円覚寺・松嶺院にて

 萩の季節になった。というか鎌倉では、もう時期を過ぎつつある。萩は、マメ科の落葉低木、紅紫色か白色の蝶形の花が群れて枝垂れる。万葉集には、140首くらいが詠まれている。宮城野萩は夏萩とも言い、東北から中部に多い。萩の名所は各地にあるが、私には奈良の古寺で見た萩が印象深い。萩の野性味はいにしえを偲ばせる。


  天雲に雁ぞ鳴くなる高円(たかまど)の萩の
  下葉はもみちあへむかも       万葉集・中臣清麻呂
                    
  萩の花暮々までもありつるが月出でて見るになきがはかなさ
                        源 実朝
  真萩散る庭の秋風身にしみて夕日のかげぞ壁に消えゆく
                        永福門院
  ゆふ風に萩むらの萩咲き出せばわがたましひの通りみち見ゆ
                        前川佐美雄
  明日あるとこいながわねば萩の花もろきいのちにうすく咲くべき
                        坪野哲久
  忘れねば空の夢ともいいおかん風のゆくえに萩は打ち伏す
                        馬場あき子