天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

たたみ鰯

腰越・こゆるぎ浜にて

 カタクチイワシの稚魚を生のまま抄いて薄く平らに伸ばし板状にして天日で干した食品。かるく炙って食べる。大根おろしを加え醤油をたらして、熱いご飯と食べると、いくらでもお替りしたくなる。東海地方の特産というが、鎌倉腰越二丁目のこゆるぎの浜では、干してあるたたみ鰯をよく見かける。小屋に入って直接買うこともできる。


      秋風や跡形もなき海の家
      秋日差たたみ鰯の影うすき


  突堤に海面見つめて釣りをするふたつ人影身じろぎもせず
  ユリカモメ、トビ、カラスまで集ひたり釣舟待てる腰越漁港
  秋風のたたみ鰯を干す浜に潮の香を嗅ぐこゆるぎ岬
  波音に身をまかせてや砂浜にひとり寝てゐる水着の女
  黒潮の青める沖にかすみたち目路はるかなる三浦半島
  腰越の老人たちがいこふらしこゆるぎ荘に艶歌ながるる
  波音のしづけき浜に夕されば悔しさつのる過ぎし日のこと