天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

石蕗

二宮町吾妻山にて

 つわ、つわぶき と読む。蕗とは別属で、キク科の常緑多年草。東海、中部以南の海岸や海に近い山に自生する。葉が蕗に似ていて、つやつや光っているところから、艶蕗に名前の由来があるという。この葉には腫物、湿疹に薬効がある。俳句では冬の季語。
 
      地軸より咲きし色なり石蕗の花
                原 石鼎
      母の目の裡にわが居り石蕗の花
                石田波郷
      石庭の石の間なる石蕗の花
                酒井 京
  秋草のしどろが端にものものしく生きを栄ゆるつはぶきの花
                       伊藤左千夫
  今年また冬近づきてつはぶきの花にさす日の光弱るかも
                       岡 麓
  寒き日に石積み重ねものの隈つはぶきの黄がまぼろしに顕つ
                       前川佐美雄
  父母のありてかなしき思案する冬のますみのつはぶきの花
                       馬場あき子
  つはぶきの花は日ざしをかうむりて至福のごとき黄の時間あり
                       小中英之


      石蕗咲くや遺跡の石もくきやかに