天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

日向薬師

日向薬師山門の阿吽像

 以前に、ここに参拝して眼病の治癒を祈った歌人・相模とその歌碑について紹介したが、ここには源頼朝も参拝している。その目的は、内々ながら、頼朝の長女(大姫)の病気快癒祈願であった。大姫は、父・頼朝が夫・義高を処刑したことから、心の病にかかっていた。
 吾妻鏡の建久5年8月8日の項に、次の記述がある。
「 今暁寅の刻に将軍家相模の国日向山に参り給う。これ行基菩薩建立の薬師如来霊場 なり。当国に於いて効験無双の間思し食し立つと。御騎馬、水干を着せしめ給う。 」
次にお供の陣容があるが、長くなるので省略。何を為したかというと、
「 御礼佛の後、半更に及び還御す。御通 夜有るべきと雖も、放生会の忌たるに依ってその儀無し。この御参りの事は、内々姫君の御祈りと。 」
大姫の心の病は治ることなく、二十歳の若さで亡くなった。NHKの大河ドラマでも知られている。


  昨夜過ぎし野分の風に落とされし杉の梢を踏みてさびしむ
  枝打の終りし杉の木立には日の斑やどりてヒヨドリの声
  宝城坊日向薬師の山門は朱に染まりたる阿形吽形
  白雲の塊あまたつらなれり日向薬師の裏山の空
  ひこばえの刈田の畔をわが行けば右に左にキチキチが跳ぶ