天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

片瀬漁港にて

 ウ科の鳥の総称で、約30種が世界に分布する。わが国には、ウミウ、カワウ、ヒメウ、チシマガラスの4種が棲む。ヨーロッパでは、鵜は「大食」「虚栄」といった象徴になるらしい。わが国では、万葉集の頃から歌に詠まれているが、このような象徴性はない。



  阿倍の島鵜の住む磯に寄する波間なくこのころ大和し思ほゆ
                       万葉集山部赤人
  玉藻刈る辛荷の島に島廻する鵜にしもや家思はざらむ
                       万葉集山部赤人
  白浜に墨の色なる島つ鳥筆も及ばば絵に書きてまし
                           阿仏尼
  すさまじくみだれて水にちる火の子鵜の執念の青き首見ゆ
                           太田水穂
  ぬばたまの黒き鵜の鳥むらがりて年魚とることを業となしたり
                           斎藤茂吉


わが住む神奈川県下では、十一月末になると城ケ島や猿島にウミウのコロニーができる。
このごろ、江ノ島の漁港付近でも目立って多くなった。


      凩やおどろに騒ぐ椰子並木
      漂泊の雲ひとつゆく冬隣


  港内のブイにとまれる鵜の鳥の羽根乾かすはいのちなりけり
  それぞれのブイにとまれる鵜の鳥はみな風上に向きて静まる
  ブイに立ち羽根ひろげたる鵜の鳥を頬につめたき秋風が吹く
  釣上ぐる鯖跳ねやまず突堤に波打ちつくる今日の凩
  白髪を岩に伸べたる波頭うしほに変はるたまゆらにして
  団扇にて電源煽ぐパソコンの命つきたり凩の夜