天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

二月の円覚寺

鎌倉円覚寺にて

 いつの間にか国宝舎利殿にはシートがかけられて修理に入っていた。手水鉢や池には薄氷が張って、いかにも早春の気配がただよっていた。居士林の横の畑には、福寿草が朝日に光り輝いていた。


     金色の花の影濃き福寿草
     したたりが薄氷を打つ手水鉢
     薄氷を解かして赤き落ち椿


  野放図に北鎌倉を疾駆せる暴走族を誰も止め得ず
  きさらぎの青空高く二筋の雲ひきてゆく機はきらめけり
  おほぶりのま白き花を落したり胡蝶侘助残雪の庭
  漱石が宿りて『門』の筆とりし帰源院に見る今朝の白梅
  紅梅の下なる池の薄氷は鈍く光りて解けはじめたり
  店内に「あなたあ」と呼ぶ幼子の声の先には父母がをり