天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

薄氷

鎌倉円覚寺にて

 うすらひ、うすごほり。早春にうっすらと張る氷、あるいは解け残った氷。


     葛桶に薄ら氷ゆらぐ宇陀にをり   能村登四郎
     田の面やや傾いてをり薄氷     有働 亨
     雁過ぎし空がのこりてうす氷    山上樹実雄


  朝な朝な湖(うみ)べにむすぶ薄氷晝間はとけて日永(ひより)
  つづくも                島木赤彦
  薄氷のとけてにじみてしづくする其の閑かなる音を待つなり
                      両角千代子
  さらさらと澄みたる音に鳴り寄りて水際にゆるる湖の薄氷
                      武川忠一
  薄氷を踏み走り来ていまわれは火の棘となりちかづきゆかむ
                      角宮悦子