鎌倉の椿
鎌倉市二階堂の南東端にある大蔵山・杉本寺の境内には椿がたくさん植えられている。特に金色の蘂を抱いた真紅の椿が目立つ。椿はわが国固有の植物、従って「椿」は国字である。海を渡り中国に行ってからは、海石榴という名称がついた。海を渡ってきた石榴の花に似た花、という意味らしい。
竹の寺として知られる報国寺には、元弘三年五月の戦で戦死した北條軍と新田軍の多数の兵士が葬られている。その墓群の周囲にも真っ赤な椿が咲いていた。
方丈の静寂(しじま)に木魚春障子
椿落ちてもののふの霊しづまらず
咲くほどに鼻むづがゆきミモザかな
もののふの屍累々浜にあり元弘三年五月の戦
敵味方問はず遺骨を祀りたる苔むす庭は真紅の椿
もののふの血のしたたりか苔むせる庭に落ちたるあまたの椿