天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

新春雑詠(2)

鎌倉長谷にて

 鎌倉の歩き初めとして、わが定番ルートの極楽寺成就院長谷寺、光則寺、高徳院、収玄寺を巡った。まだ松の内であったので人出は多かった。


     箒目の参道にちる白椿
     正月の仏足石に飾り餅
     あらたまの写経にならぶ弁天堂
     笹鳴の羽根ひるがへる葉蔭かな
     初春の大仏かなし頬の罅


  水仙と椿咲くのみ極楽寺真裸にしてサルスベリ立つ
  もののふ墓所をせばめて住宅が押し寄せてゐる極楽寺
  南天の朱実のひかる奥に立つ不動明王のパワースポット
  あたらしき年の初めの青空に白木蓮はつぼみつけたり
  御神籤を開けてはしやぐ家族らがめぐる今年のパワースポット
  おほかたは女なりけりあらたまの写経にはげむ弁天堂は
  日当りのわろき場所にも春はきてつぼみ咲き初む素心蝋梅
  谷戸の夜の寒気がなせる薄氷を押しやる朝の湧水の音
  大仏の光の隅にしづもれり源家一門無縁諸精霊
  太々と「四條金吾邸址」と書けり伯爵東郷平八郎
  天地(あめつち)の境にうかぶ釣舟のかげろふが見ゆ正月の朝