天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

川崎展宏晩年の句

ふらんす堂より出版

 1927年1月、広島県呉市生れた。東京大学文学部在学中に加藤楸邨に師事、1980年には同人誌「貂(てん)」を創刊、代表を務めた。昨年12月29日、肺癌のため死去。以前から、その軽妙繊細な俳風に惹かれていたが、まだまとめて句集を読んだことがない。現在、ある句集を注文している。晩年、病院で詠んだとされる句に次のようなものがある。最後まで知性が衰えなかったことが分かる。うらやましい。全句集の刊行が待たれる。


    三月の潮の満干大鎧
    つくしんぼ音の似てゐる通信簿
    其角忌と角々しきもさすがかな
    をけら参り夢を見てゐる現かな
    点滴の滴々新年おめでとう
    花はみな菩薩鬼百合小鬼百合
    壊れやすきもののはじめの桜貝
    而シテ見るだけなのだ桜餅
    米処米沢四方の花霞
    そのとほり言はれるとほりです夜長
    聴いてごらん朝ひぐらしが鳴いているよ
    いろいろあらーな夏の終りの蝉の声
    朝顔は水の精なり蔓上下
    八月や有為のくやま今日越えて