天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

女郎花

二宮町吾妻山にて

 おみなえし と読む。女郎花と書くようになったのは平安時代のなかば頃からという。合弁花類オミナエシオミナエシ属 の多年生植物。周知のように秋の七草のひとつ。万葉集では14首に詠まれている。大和の佐紀が名所だったのか、佐紀の枕詞。粟花(あわばな)、思い草、チメグサ、敗醤(はいしょう)などの別名もあるが、今まで聞いたことがない。根は漢方薬になる。


  秋の田の穂向見がてりわが背子がふさ手折りける女郎花かも
                        大伴家持
  秋の野になまめき立てる女郎花あなことごとし花もひと時
                        遍 昭
  さを鹿の己が棲む野の女郎花花にあかずと音をや鳴くらむ
                        源 実朝
  世の中はくちさが野なるをみなへし秋にあへりと人に知らるな
                        香川景樹
  わが馬の腹にさはらふ女郎花色の古りしは霜や至りし
                        島木赤彦
  女郎花ここにも咲きて垂直に立つものばかり残れる廃墟
                        永田和宏