天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鳳仙花

大磯湘南平にて

 別名に爪ぐれ、爪紅(つまくれない)、つまべに。ツリフネソウ科の一年草で、インドネシヤ原産。平安時代に渡来したらしい。花の色には、白、赤、黄などがある。


  鳳仙花照らすゆふ日におのづからその実のわれて秋くれむとす
                     金子薫園
  たたかひは上海に起り居たりけり鳳仙花紅く散りゐたりけり
                     斎藤茂吉
  雨ののちのぼれる月の照れれども紅(くれなゐ)は暗し夜の鳳仙花
                     宮 柊二
  ほうせんか夕日に透きて太きかな一念の意志みゆるは清く
                     馬場あき子
  鳳仙花弾けむとして咲き乱れ叫喚地獄のやうなるしづけさ
                     島田修三
  子供たちの数だけうさこがゐることがホーセンクワの種のやうに
   ぴよん               河野裕子


茂吉の歌は最も有名。追伸として、この茂吉の歌に対する前衛歌人塚本邦雄の鑑賞の要点を以下に、引いておく。
  「鳳仙花と上海動乱、この二物衝撃、二者の意外な出会いによって生ずる
  美的空間は、近代短歌の中でも、瞠目に値しよう。はっとするくらゐ新しい、
  緊張と戦慄を伴った短歌など、かつて誰が予想し、誰が実践して見せて
  くれたらう。」