天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

小泉八雲展

神奈川近代文学館にて

 生誕160年、来日120年を記念して、10月2日から11月14日まで、神奈川近代文学館にて開催された。充実した資料と説明が展示されていた。日本における14年あまりの日々を中心に、草稿、書簡、遺愛品、初版本、写真など約400点により、54年の生涯と作品が紹介されていた。英語で書かれた原稿やメモの多さに驚いた。転勤・移住地の多さにも感心した。また、東京大学での英語の講義を学生たちが克明にノートにとっていたが、それをもとに講義録として出版されたことも驚きであった。


     山手には坂道多し冬日
     黒犬の朝の散歩や冬薔薇
     熱情はつね赤黒し冬薔薇
     どんぐりの庭に絵を描くエリスマン邸
     
  若くして左目つぶれ近眼の右目にたよる八雲なりけり
  つぶれたる左目厭ひ顔面の右側のみを撮らせし八雲
  原色を避くる日本の美意識の繊きを好む八雲なりけり
  学生が一言一句書きとりし八雲の英語夏目の英語
  くりかへしセツの語れる怪奇譚暗き明りに八雲は聴けり
  遺品にはなたまめ煙管と煙草入れヘビースモーカーなりしや八雲
  ひときはに墨絵の朝日気に入りて死の際までもながめをりしと
  駅までの道まちがへてたどり着く「ひらがな商店街」を通りて