天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

小田原城・御感の藤

小田原城にて

 藤の花の季節になると毎年訪れるスポットのひとつである。ただし、この藤の経歴は、少しややこしい。もともとこの藤は、小田原城二の丸御殿に鉢植されていた大久保公愛玩のものであったが、明治維新の後に、西村氏が買い受けて育てていた。大正天皇が皇太子の時に、小田原御用邸に滞在中、西村邸の前を馬上で通りかかったところ、召し馬が藤棚の下に駈け入った。皇太子は、「見事な花に心なきことよ」と感嘆されたところから、この名がついたという。大正十一年三月に、西村家から現在の場所に移植された。樹齢は二百年を越えている。


     藤棚の花の下蔭うれひ顔
     小田原城御感の藤に謂れあり
     その昔(かみ)の城の石垣しゃがの花
     うかびきて鯉が口開く杜鵑花(さつき)かな


  睡蓮の池の水深浅くして鯉むつみあふ音けたたまし
  産卵を終へたるらしもうかびきて躑躅の朱き花弁(はなびら)吸ふ
  ふた束の幹が枝張る藤棚の花下蔭に坐りうごかず
  あてもなく御感の藤を見に来しが今年短き藤の花房


(注意)右上の写真は、5月9日の状況。現時点では藤の花の時期を過ぎています。