天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

小春日の二宮海岸

皇帝ダリア(二宮町にて)

 二宮町の梅沢海岸には漁港はないが、朝八時から朝市が開かれているらしい。鮮魚は八時半から販売というビラを見た。決まった曜日なのかどうかは不明。臨時の駐車場が開かれて、十数台が集まってくるようだ。らしい、ようだ、というのは、自分の目で見たことがまだないからである。海岸には突堤があるので、漁船を横付けできる。ただ、本格的な漁船は付近で見かけないので、地元の有志たちの趣味的な活動なのかも。


     ささがにの囲ひを破る落葉かな
     小春日の朝市終へし浜辺かな


  家建てて庭のなければ鉢植の花咲かせたり家の
  めぐりに


  そのかみは長寿の里と呼ばれたりコスモスが咲き
  菜の花も咲く


  朝八時半から鮮魚売り出せり車のつどふ梅沢海岸
  朝市の終りし浜にのこれるは絶ゆることなき潮騒
  のこゑ


  波の間に見え隠れせり釣舟の小さきがあまた海坂
  に散る


  潮騒を聞けばしのばゆ数千年このわだつみに
  漁(いさ)りせし祖先(おや)


  山並を上下に分かつ白雲は箱根を出でて伊豆に
  たなびく


  二宮の晩秋の浜にもの思ふ眼鏡にはつか飛沫
  かかれり


  犬つれて父と娘が散歩する潮騒たかき朝の海岸
  いつよりぞこの海の辺に人の棲む弟橘媛を山
  に祀りて


  道の辺の皇帝ダリアを見上げては老婆ふたりが
  花談義すも


  この浜に生れしか嫁に来たりしか皇帝ダリアを
  愛づる老婆ら


  綱ひきて鈴を鳴らせる兄弟を見まもる母と
  つはぶきの花


  園児らに順に見せたる望遠鏡釣舟ひとつ波に
  もまるる


  冬立ちてなほ咲きのこる山百合をいつくしみ見る
  浅間神社