天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

紅葉狩(1)

南足柄丸太の森にて

 南足柄市大雄山の一隅に足柄森林公園丸太の森がある。入園料四百円。ここにくるとわが辿るルートは決まっている。万葉植物園、けやきの広場、見晴らし広場、詩の広場、せせらぎの小径、ターザンロープ、足柄山野草園、吊橋、親子の広場 と、ほぼ外周を歩くのである。
 今年の錦秋はどこか尋常でない。それは例年なら、けやきの広場に立つ数本の欅大木の黄葉は輝くばかりに見事なのだが、今年は葉が青枯れてすでに落葉していたのである。それでも渓谷沿いには朱や黄のもみじが燃えて見ごたえがあった。


     耳すますみはらし亭のすすきかな
     万葉の南足柄花りんだう
     小鳥来る雑木林のこゑ燦々


  万葉の草花枯れて冬に入る南足柄丸太の森は
  見晴らすは雲の切れ間ゆ霜月の薄日差したる小田原の街
  のぼり来し丸太の森の頂きは芒そよげるみはらし広場
  紅葉のさだかならざる曇り日の芒がなびくみはらし広場
  朱のリボン次に伐る木か残す木か山道の辺の杉に巻きたる
  枝打のゆきとどきたる杉の木の林立するはたふとかりけり
  間伐の了りし杉の林には黄葉したる下萌えの木々
  大雄山保安の森が蓄へし水は途絶へずせせらぎ小径
  陽は差せど小暗き山の杉木立木の間にもゆる谷の黄葉
  おほかたの草花枯れし霜月の南足柄りんだうの花
  人の往き来まれなる道にふみ迷ふ胸に手足にゐのこづち付け
  かがやける黄葉を見しはいつの日か大き欅の青枯れ落葉