紅葉狩(5)
大磯のもみじの見所はいくつもあるのだろうが、私の知るところでは、楊谷寺谷戸横穴群のある紅葉山と高麗山の地獄沢の二か所である。楊谷寺谷戸横穴群は古墳時代後期のものという。紅葉山の中では、この横穴群から見るもみじが最も鮮烈である。高麗山についても、古墳時代以降、飛鳥・奈良時代からの歴史が知られている。大磯の山々では、昔から森林伐採の問題があったらしい。地獄沢には欅にせよイロハモミジにせよ大木があるが、伐採は免れていたのであろうか。日当りが悪く湿地なので、黄葉は他場所に比べて遅い。
なお大磯の山中では、高田保公園近くと地獄沢の二か所で「いのししに注意」の貼紙を見かけた。
もみぢせる山の横穴古墳群
もみぢ散つて露はになりぬ白き富士
高麗山の朝日にかをる水仙花
高麗山にいのしし潜む紅葉狩
天空のもみぢを仰ぐ地獄沢
もみぢして蔦のからまる枯木かな
あかあかと椿散るなり化粧坂
大磯の江戸見附跡水仙花
もみぢ散る鴫立沢の大欅
歌碑句碑の文字を読み解く笹子かな
「いのししに気をつけよう」の貼紙を路傍に見たり大磯の山
新しき山靴はきてわが登る湘南平は空高きかも
うす赤き霞かかれる東京の空をかなしむ湘南平に
復興の目途まだ立たぬ年暮れて朝日にむかふ水仙の花
昨日ふりし雨にぬかるむ山路きて落葉にすべる地獄沢かも
あまりにも木の高ければ仰げども黄葉は見えず小暗き森は
いのししのぬた場もありて地獄沢丈高き木の紅葉ちるなり
凄艶といふも言の葉及ばざり天の黄葉を見る地獄沢
功なりし新島襄の大磯の静養むなし百足屋旅館