天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

桜狩(5)

湘南平にて

 桜はもう散り始めていることを承知で、大磯の高来(たかく)神社から地獄沢を経て湘南平へと山路を歩いた。山桜はもとより、ムラサキケマン (紫華鬘)、山吹の花、著莪の花、花大根、タチツボスミレなど多彩な花に出会えた。高来神社では、春の大祭の準備らしく、神輿が境内に出されて確認作業がなされていた。神輿を急坂を担いで高麗山を往復することは知っていたが、詳細を調べると次のような次第である。
 山神輿は、もともと高麗寺の本尊である千手観音の祭として、360余年前から始められたらしい。明治の神仏分離令により高麗寺が廃寺となったため、高来神社の春祭に引き継がれたという。以下に要約する。
高来神社の御霊を神輿に移し、高麗山の上社まで担ぎ上げる。命綱をつけ、神輿のバランスを取りながら高麗山の坂道を引っ張り上げる。途中で傾斜角60度前後の絶壁もあり、危険極まりない。今年は神輿の担ぎあげが四月二十日の午後六時から。下すのが二十二日の午前十一時からとなっている。二十日の午後六時頃、「上宮渡御」開始、男坂を登る。路沿いには堤燈を持った人が待機。小休止をとりながら登る。 午後8時頃、女坂との合流点(中の坊跡)に到着。大休止をとる。神輿の屋根を平手でたたく。御神酒、水、おにぎり、沢庵漬が担ぐ人に振舞われる。神輿は上宮に3日間安置された後、約1時間かけて女坂を下り、高来神社に戻る。この後に神社では神事が行われ巫女による浦安の舞が奉納される。


     虎御前の化粧の井戸や花吹雪
     高麗山へ神輿をかつぐ著莪の花
     地獄沢木洩れ陽にちる桜かな
     地獄沢天(そら)より花のちり来たる
     桜ちる山路に足をとられけり
     高麗山の朝日に匂ふ著莪の花
     山中のベンチにつもる花吹雪
     テレビ塔さくらの下に見上げたり
     アヲバトのしばし憩へる山桜
     縄張りを争ふ小鳥山桜
     
  大磯の潮飲みにくるアヲバトがしばし憩へる山桜花
  ミサイルの標的なれば原発の位置あらはなる国を危ぶむ