天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

花狂い(4)

源氏山からの遠望

 鎌倉・壽福寺裏の山道から入って源氏山の桜を目指した。驚いたことに外国人の一団がスマホ頼りに源氏山に向っていた。壽福寺の裏で山道の方向を英語で教えてあげた。雨もよいの曇り空だったので、近くで見上げる桜はあまり見栄えがしなかった。むしろ離れた山に点在する桜の色どりが美しく、まさに桃源郷の風情であった。源氏山から向かった葛原が岡神社周辺の桜は満開で見事だった。後醍醐帝の鎌倉幕府倒幕計画に加担した日野俊基処刑の地と思えばなおさらである。そこから下って北鎌倉の浄智寺裏へ出た。円覚寺門前の桜を背景とした駅の風景は、昔見た映画の一場面のように懐かしさが感じられた。


     遠くから見るがゆかしき山桜
     花越しに鎌倉のぞむ頼朝公
     鎌倉の桃源郷よ山桜


  思はずも外国人に訊ねけり Where do you want to go ? 
  寿福寺の裏に出会ひし異国人源氏山への道を訊ねき
  英語にて源氏山への道教寿福寺裏の山道に来て
  見上ぐれば花のうしろの雨雲が花をやつかみ見えにくくせり
  鎌倉を源氏山から見渡せば桃源郷の山さくら花
  苔むせる石が処刑の場所といふ花のなみだの葛原が岡
  縁結びの稲荷としたり石ふたつ男石と女石を縄にむすびて
  まなかひの山のそこここ美しきうすくれなゐの花の群生
  浄智寺の裏山天柱峰に立ちスマホ見てゐる異国の男
  円覚寺北鎌倉の駅の間のさくら懐かし昭和の映画