天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

炎暑雑詠(3)

座間谷戸山公園にて

 里山では、木立の中は日差は避けられるが、丘陵を上下すると汗をふんだんにかく。藤沢の新林公園、横浜の舞岡公園、座間の谷戸山公園。わが定番の散策場所である。溜池では牛蛙が啼いている。これも定番。


     道祖神鉄砲宿の木下闇
     みそはぎの花の群落晩夏光
     里山の草刈終へて木々すがし
     二句を得て里山を出づ炎天下
     炎帝の手をまぬがるる木陰かな
     稚児百合が逃げ出しさうな垣根かな
     影のみが地上を過ぎる大揚羽
     牛蛙上下の池に啼き交はす
     里山は田の草取りの小谷戸かな
     ひたすらに里山歩く炎天下
     首とれし石仏三つ今朝の秋
     秋立つや媼がひとり経を読む
     秋来ぬと水琴窟の音に知る
     里山は秋立つ気配六地蔵
     湧水の音にいこへる木陰かな
     谷底に法螺貝ふくか牛蛙
     地に落ちてぎいと一声油蝉
     ひぐらしのこゑ雨近き空模様
     少女らは話に夢中牛蛙
     里山の池にさざ浪今朝の秋
     撮るほどにのうぜんかづら風に揺れ


  あさがほのアーチの門をくぐりけり月曜朝のクリーニング店に
  昼間でも星を映すと伝へたる星の井戸には水面が見えず
  秋風の読経のこゑも虚しかり石仏三体首無しにして
  里山の木立の中にしづもれる湧水の谷水鳥の池
  近きにはミンミン蝉の鳴きしきる木立の奥はひぐらしの声
  谷戸山の炭焼小屋に煙無し秋立つ朝の木洩れ陽の道
  牛蛙池の中洲の葦原にひと声ぶおうと啼きにけるかも
  牛蛙啼けど気にせず少女らは絵筆に描く里山の森
  ザリガニを釣るにもルールありにけり持ち帰りても放つべからず
  雨近き空模様なる里山の小暗き森にひぐらしの鳴く
  かさぶたに蔽はれにける桜木の肌にとまりて油蝉鳴く