朝顔
朝顔が咲くと秋がきたことを知る。実際には夏のうちから咲き始めるのだが。牽牛花とも。種子は「牽牛子(けんごし)」という漢方の利尿剤で、日本には奈良時代に薬として伝わった。江戸時代以降、栽培が広まり、交配によってさまざまの変種が創り出された。私の見た中では、洗面器ほどの大きさの花が一番の驚きであった。
朝がほや一輪深き淵のいろ 蕪村
朝皃や露もこぼさず咲きならぶ 樗良
朝顔のをはりの白を海士の家 川崎展宏
朝顔や粥噴くまでを庭にをり 神蔵 器
咲くままに咲かしめおけば朝顔は家を包みて空にこぼるる
森川平八
眼ざめには今朝はいくつと朝顔の花をかぞふる季(とき)の
たのしみ 筏井嘉一
みゆるごとしみえざるごとし床を這ふあさがほの手の千の収奪
葛原妙子
まだ暗き暁まへをあさがほはしづかに紺の泉を展く
小島ゆかり
あさがおが朝を選んで咲くほどの出会いと思う肩並べつつ
吉川宏志
江戸川区鹿骨(しかぼね)よりぞ運ばれて藍すずしかる市の朝顔
蒔田さくら子