天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

木賊

鎌倉・光則寺にて

 砥草とも書き「とくさ」と読む。表皮の細胞壁にケイ酸が蓄積して硬化し、砥石のように茎でものを研ぐことができることから、この名が付いた。具体的には、茎を煮て乾燥させたものを紙ヤスリのようにして使う。この茎は引っ張ると節で抜けるので、子供の頃は、それが面白くて遊んだものである。「木賊刈る」で秋の季語。


     碑の西に鎌過ちぬ木賊刈      矢田挿雲


  前の世にわが見しものを忘れねば黒の木賊がぎしぎしと立つ
                      安永蕗子
  木賊にくる春といふかなしきものありてマルグリット・デュラス
  の恋も死にたり            米川千嘉子


  垂直のほかは知らざる深みどり木賊木賊に触るることなし
                      高橋良子