天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

もみぢの天園

瑞泉寺の紅葉

 鎌倉湖、天園、瑞泉寺と歩いてきた。師走とはいえ、晴れた休日の鎌倉の山は、ハイカーで混雑している。
 瑞泉寺のある場所は、紅葉ヶ谷という紅葉の名所である。夢窓国師作庭と伝わる石庭の崖上には、「偏界一覧亭」と呼ばれる建物があり、その昔、名僧たちがここに集まって詩の会を催した。紅葉の季節は、「楓林ことごとく赤し」といわれるほどのものだったという。
瑞泉寺の境内には、周知のように次の句碑や歌碑がある。

     いつぬれし松の根方ぞ春しぐれ    久保田万太郎
  死をいとひ生をもをそれ人間のゆれ定まらぬこころ知るのみ
                       吉野秀雄
  手の平に豆腐をのせていそいそといつもの角を曲りて帰る
                       山崎方代


     木漏れ陽の天園の道落葉踏む
     かんかんともみぢの奥の竹の春
     切株の銀杏もみぢとなりにけり
     南天めでて法要をはりけり


  断崖(きりぎし)の藪に笹子は鳴きにけり紅葉映せる緑青の池
  天園の山路たどれば紅葉の木の間に光る鎌倉の海
  落武者が追手のがれてまろびけむ落葉なだるる谷戸の裏山
  駐車場にあらざる空地縄はりて荏柄神社の御旅所はあり