天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

早春賦(2)

下曽我にて

 昔から三寒四温というように、天気の変動が大きい。気象庁の積雪予報がはずれて、腹を立てている人たちもいるようだ。スーパーコンピュータを使ってデータをまとめているが、それを元に予測するのは、あくまで人間なので、匙加減が入ってくる。羹に懲りて鱠をふく、といった事態が起こり得るのだ。
 久しぶりに小田原の曽我梅林に行ってきたが、二月の十日頃では、未だ四分咲きであった。


     立春をすぎて雪降る大和かな
     立春や福は内のみ言ひてやむ
     立春のささがきごぼう煮込み飯
     桜田門外の変あり春の雪
     遊行寺や雪解け水の音高き
     梅林はいまだ四分咲き富士の嶺
     梅林の花や遅しと梅の茶屋
     どろどろと砲撃やまず梅の花
     砲撃の音にも慣れて探梅行
     紅梅の枝垂るる水子地蔵尊




  照手姫の墓に枝垂れてつのぐめる梅のつぼみは頬紅の色
  縄文の世から幾人死にたるか河豚毒を消す手立て探して
  梅林の花震はする砲撃音富士の麓の演習しきり
  鎌倉の世の仇討も身近かなる傘焼まつり下曽我の里
  仇討の成就祈れる弟の肩に手を置く兄の五郎は
  教室の園児らのこゑ聞えたり地蔵和讃を読みて佇む
  探梅もうはの空なり歌人(うたびと)の女性遍歴を思ひ返して
  三月の江戸に雪ふる異常さは「桜田門外の変」とし残る
  「やんちや」とふ言葉に暴力公認のひびきありけり
  芸能界は


  「昼寝しない午後は時間がやたら長い」本読み終へて
  つぶやく吾は