天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

彦根城

彦根にて

 空梅雨のさなか、汗だくになって国宝の彦根城に登った。この城は周知のように、江戸幕府大老を輩出した井伊氏14代の居城であった。明治天皇が巡幸で彦根を通過した際に、城の保存を命じたため明治の廃城令に伴う破却を免れたという。天守閣はとても人が住める場所ではなかったが、琵琶湖からの風が吹き通り涼しかった。冬には凍えるほど寒くなるはず。
夜は湖畔の「かんぽの宿」に泊まり、蛍観賞にバスで出かけた。米原市長岡地区はゲンジボタルの発生地として、国内唯一の国特別天然記念物に指定されており、住民が天野川姉川の支流でホタルを保護している。この時期になるといくつもの旅行社のバスツアーがやってくる。


     早苗田の畦に佇む鷺の朝
     覗き見る埋木舎の夏座敷
     階のぼる梅雨の晴れ間の彦根城
     天守閣前に息継ぐかき氷
     火を点すあまた蛍のとき来たり
     灌漑の野川に蛍飛び交へる
     朝湯して梅雨の晴れ間の琵琶湖かな


  馬に乗り槍を小脇に抱へたる銅像として井伊のつはもの
  湖の風の涼しき天守閣国宝として彦根城あり
  彦根城壁にいくつも穴ありて鉄砲狭間矢狭間といふ
  天守閣最上階は断崖のきだはし昇り人住めぬ場所
  東海に台風衰へ失せにけり梅雨の晴れ間の琵琶湖夕照
  山麓の野川に沿へる薮蔭に点滅あまた蛍のひかり