梅雨雑詠(3)
湘南の海辺では、梅雨の時期には、来る盛夏の海水浴客を呼び込むために、例年のように海の家が盛んに建てられている。これらは9月になると撤去されて閑散とした海辺にもどるのだが。ところでこうした海の家では、緊急地震速報が発令された場合、どのように海水浴客を誘導するのだろうか? 訓練をしている、というニュースは未だ見たことがない。
梅雨になっても海岸では釣をする人が絶えない。晴間が出ればなおさらのこと。砂浜では土鳩が乾いた砂利に胸腹を押しつけて身体を温めている。
梅雨の海ボードに立ちて櫂を漕ぐ
鱚釣の竿立て坐る磯の波
咲き出でしときは白無垢姫あぢさゐ
梅雨やみし遊行寺坂の朝には作務衣の僧が病葉を掃く
時折の高波待ちて腹這へる梅雨の晴れ間のサーファー
の群
大津波押し寄せたらば水族館イルカの群は海に帰らむ
この夏の救助に備へ隊員は海岸沿ひに遠く泳げり
心地よき梅雨の晴れ間の潮風に羽根ひろげたりブイに
立つ鵜は
東南海地震の津波想へども稼ぐが先と海の家建つ
イチローを慕ひてゆきし川崎の道化あはれむメジロ、
ヒヨドリ
何釣るとなけれど磯に竿立てて老人座る二宮の海
足赤き土鳩は砂利に腹這ひて身をあたたむる潮騒の中
釣上げし鱚の二三をさし入れて蓋して坐るアイス
ボックス
屈みこみデジタルカメラ取り出せり参道脇のホタル
ブクロに
奉納の金子の額を刻みたる大き碑境内に立つ
姿よき若き榎はこの山の主ならむと頂きに立つ
吾妻山頂きにみるかなたには雲の高さの大山の峰
確証とまでは言へねど衝突の後に影ひくヒッグス粒子