天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

姫蔓蕎麦(ひめつるそば)

北鎌倉円覚寺にて

 十一月も中旬になろうというのに、鎌倉の紅葉もまだ見頃を迎えない。もう少し待たなければならない。円覚寺境内では、寒椿、杜鵑草、十月桜、石蕗、菊、関谷の秋丁子、野牡丹、姫蔓蕎麦 などの花々や、紫式部、千両 などの実が見られた。


     蹲踞から立ちて弓引く寒椿
     断崖に隆起の跡や石蕗の花
     茶の花のちりてとどまる谷戸の溝
     一碗の緑茶を喫す谷戸もみぢ
     鶺鴒がしきり尾をふる虎頭岩
     漱石の筆をやすめし谷戸の石蕗


  ヒマラヤを原産地とし明治期に渡来せしとふ姫蔓蕎麦は
  紅葉(もみぢ)にはいまだ間のある鎌倉の谷戸の底ひに電車を待てり