天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

紫陽花の明月院

北鎌倉明月院にて

 鎌倉には紫陽花の名所がいくつかあるが、明月院はその代表格である。創建時は明月庵と称し、最明寺及びその後身の禅興寺の支院であった。禅興寺は明治初年に廃寺となり、明月院のみが残った。現在は臨済宗建長寺派の寺院で山号は福源山。
 明月院の紫陽花の由来はさほど古くない。第二次世界大戦後に明月院では参道を整備する杭が足らず、杭の代わりに紫陽花を植えたという。
本堂後庭園の花菖蒲も有名だが、今回はすでに時期が終って閉園になっていた。


     紫陽花の名所となせり谷戸の寺
     紫陽花を抱へて坐(おは)す花地蔵
     紫陽花の囲める墓地をうらやめり
     紫陽花や鎌倉十井つるべの井
     紫陽花やつるべに汲みし井戸の水
     紫陽花を桶に活けたり井戸の端
     紫陽花や抹茶セットの月笑軒
     紫陽花や猫に手を出す女たち
     あぢさゐの上に梅の実色づける
     紫陽花や墓地を買ふこと子に図る


  鎌倉をめぐる人らに貸し出せる和服涼しきあぢさゐの道
  人の列途切れずうねる 紫陽花の明月院に行き交ふ道は
  腹ばへる猫に手をだす女らにほほゑむごとし紫陽花のむれ
  明月院あぢさゐの庭見終はりて出口にむかふ竹林の路