天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大寒(3)

角川学芸出版

 飯田龍太が詠んだ大寒の俳句を以下にあげておく。最もよく知られたのは二句目である。


     大寒の雲に真近く栖みゐたり
     大寒の一戸もかくれなき故郷
     大寒の洩れ灯刃をなす家ばかり
     大寒の赤子動かぬ家の中
     大寒や毛生薬も瓶の澄み
     大寒の月ののり出す港町
     楠の山から大寒の朝日出る
     大寒の薔薇に異端の香気あり
     大寒の牛鳴いてゐる萱の中
     大寒や夜に入る鹿の斑を思ふ
     大寒の夜風吹きゐる善光寺


  薄氷(うすらひ)に閉ぢ込められし侘助の淡きくれなゐ
  美しかりき