天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

小池光の短歌―ユーモア(25/26)

◆話言葉、卑俗な言葉


  そんだからおまへはダメだつてんだよ、となどいひながら赤ママチャリに

                              『静物
  相当に大きなる鳥が十数羽おしだまり居り道のべの木に       
  「おい止まれ、どこへ行く」「ちと浅草へ」春はあけぼのSuica
  誰何(すいか)                     『滴滴集』

  夏蜜柑線路つぱたに生(な)つてをりふゆのはじめとなりにけるかも 

                             『山鳩集』
  たくさんの糞出でて興奮をしたる猫叫びながらに家内(やうち)すつ飛ぶ 

                           『思川の岸辺』

 

◆結句に古語を使用


  おのづから膨るるはてはgas stove のうへの平(たひら)ゆ落ちにけるかも

                          『日々の思い出』
  馬の穴なにゆゑ馬穴(バケツ)水満ちてつくゑの上にありにけるかも    
  学歴をなほ信じゐる母連れて春のハトヤに来たりけるかも    
  ダイドコロの片隅にしてひよろひよろと白菜は花、つけにけるかも 

                              『静物
  日本の河馬族にふかく刻まれし重吉のおもかげを豈(あに)わすれめや  

                             『滴滴集』
  ヌードルに「かやく」を乗せて湯そそぎすかやく火薬と人なおもひそ 

                             『山鳩集』
  夏蜜柑線路つぱたに生(な)つてをりふゆのはじめとなりにけるかも   
  つくゑよりころがり落つる丸薬は日本万歳と言ひにけらずや    
  ムササビと会ひしモモンガ帽子とりごきげんいかがと言ひにけらずや 

                             『梨の花』 

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夏蜜柑