天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

城山かたくりの里

かたくりの里にて

 神奈川の花の名所100選の内の一つで、今までにも数回とり上げている。今回は時期が少し早かったため、寒緋桜系を除き、桜の花は未だ咲いておらず、山上から見下ろす谷間は物足りない感じであった。
 例年のように山道には大勢の人が、みなカメラを抱えて地に伏せてベストショットを狙っていた。かたくりの花に絞って、いろいろな角度から数百枚を撮れば、数枚は良い写真が得られよう。こうした写真が展示されている場所があったが、入らずに過ぎた。
 万葉集にある大伴家持の「もののふの八十をとめらが汲みまがふ 寺井の上のかたかごの花」は、周知の名歌である。「かたかご」は「かたくり」のこと。


     かたくりの花にはらばふ山路かな
     花かんざし木五倍子(きぶし)の触るる山路かな
     木五倍子咲く花かんざしに身をかがめ


  かたくりの里行きバスを待ちかねてタクシーに乗る
  橋本駅


  入場料ひとり五百円の受付に姫辛夷咲くかたくりの里
  黄の群るる檀香梅の根方には雪割草の青白き花
  家持のうたを思ひてかたくりの花を見つむる里山の朝
  シスターの帽子が風に吹かるるか山のなだりのかたくりの花
  ヒメコブシ、キブシ、ミズキやミツマタが花を競へり
  かたくりの里


  山道に並びて伏せて写真撮るカメラの先のかたかごの花
  地に伏せてカメラ構へる人々の順番を待ちわれも地に伏す
  咲き初めしミツマタの下かたくりの花のそばなる猩々袴
  かなたには白木蓮の聳えたり間近に見上ぐコヒガンザクラ
  見渡せど染井吉野はまだ咲かぬ少しさみしきかたくりの里
  かたくりの里を見終へておみやげに牛蒡と赤蕪の漬物を買ふ