天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鷽(うそ)(2)

NHKテレビBS「筑波山」から

 大宰府や亀戸の天満宮には、ウソ祭という神事がある。嘘を鷽にかけて、木製の鷽を参詣人が取り換えあって、一年の鷽を流すという。俳句では春の季語。なお、体色から雄を「照鷽」、雌を「雨鷽」とも呼ぶ。まことに奥床しい。


     てり雨や滝をめぐれば鷽の啼く     白雄
     照鷽と雨鷽つるむあさの雨      丸山海道
     乙子神社へおりゆく雨の鷽伴れて  山田みづえ
     照鷽や吉備の乙女ら弓しぼる     神蔵 器


 次には石川不二子の鷽の歌を四首あげる。


  おつとりと逃げぬ鳥かなむきむきの鷽は腹充ちてゐるにかあらむ
                    石川不二子
  足守川堤(つつみ)の上のさくら並木綻ぶにはやき枝の鷽二羽
                    石川不二子
  桃の蕾嘴(はし)もて捥ぎて鷽が居り妻ともなへり厨より見ゆ
                    石川不二子
  咽喉もとのくれなゐ見する鷽三羽さつき鳴きしはどれともなくて
                    石川不二子