鷽(うそ)(2)
大宰府や亀戸の天満宮には、ウソ祭という神事がある。嘘を鷽にかけて、木製の鷽を参詣人が取り換えあって、一年の鷽を流すという。俳句では春の季語。なお、体色から雄を「照鷽」、雌を「雨鷽」とも呼ぶ。まことに奥床しい。
てり雨や滝をめぐれば鷽の啼く 白雄
照鷽と雨鷽つるむあさの雨 丸山海道
乙子神社へおりゆく雨の鷽伴れて 山田みづえ
照鷽や吉備の乙女ら弓しぼる 神蔵 器
次には石川不二子の鷽の歌を四首あげる。
おつとりと逃げぬ鳥かなむきむきの鷽は腹充ちてゐるにかあらむ
石川不二子
足守川堤(つつみ)の上のさくら並木綻ぶにはやき枝の鷽二羽
石川不二子
桃の蕾嘴(はし)もて捥ぎて鷽が居り妻ともなへり厨より見ゆ
石川不二子
咽喉もとのくれなゐ見する鷽三羽さつき鳴きしはどれともなくて
石川不二子