天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蓬(よもぎ)(1)

東俣野の田圃にて

 キク科の多年草。芳香があり葉は菊の葉に似る。モグサは葉裏の綿毛で作る。秋に、黄褐色の小さい頭状花をつける。若葉を摘んで草餅にする。蓬の古名に、さしも草、させも がある。万葉集には長歌一首に詠まれている。


  秋過ぎて庭の蓬の末見れば月も昔になる心地する
                       西行
  これや見し昔住みけむ宿ならむ蓬が露に月の宿れる
                       西行
  なけや鳴けよもぎがそまのきりぎりすくれ行く秋はげにぞ
  悲しき                曾禰好忠


  下野やしめつの原のさしも草おのが思ひに身をや焼くらむ
              古今和歌六帖・よみ人しらず
  玉しける庭に移ろふ菊の花もとのよもぎの宿な忘れそ
                       源 頼政
  契りおきしさせもが露を命にてあはれことしの秋もいぬめり
                   千載集・藤原基俊
  ならひこしたがいつはりもまだ知らで待つとせしまの庭の
  蓬生(よもぎふ)        新古今集藤原俊成女


  いかにせんよもぎの髪の秋の霜身のいたづらにふりまさりつつ
                新撰和歌六帖・藤原家良