天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

森林浴

鎌倉湖畔にて

 以前にもご紹介したが、鎌倉湖はもとは散在ガ池と言った。大船や岩瀬の水田を潤すために江戸時代に山を切り開いて造られた湖である。久しぶりに訪れて、「せせらぎの小径」「馬の背の小径」「のんびり小径」「パノラマ小径」などをめぐった。木々の若葉は青葉に変りつつあり、森にはさまざまな小鳥が啼いていた。声から判別できたのは、鶯、時鳥、コゲラ くらいで、他は分らなかった。


     木道を踏めばころころ青葉影
     こゑのみが湖面をわたる時鳥
     転勤は若き日のこと時鳥
     ギイと啼くこげらはいづこ青葉闇


  水底に沈める白き大鯉と知りて驚くにぶき動きに
  幹ほそく黒く立ちたりバラ科なるセイヨウバクチノキに
  出会ひたり


  「富士山が見えます」といふ矢印の空はかすみて電線よぎる


  シロダモの曲りを見れば那辺からバット作ると疑ふばかり
  比較的ま直に立てるカツラの木これならバットとれるかと見る
  クアククと争ふ鳥は何鳥か姿見えざる若葉の梢
  夏長けて花咲くらむか白き房くまつづら科のヤブムラサキは
  うこぎ科のカクレミノなる木に出会ふ隠れやうなきその高き丈
  もくせい科ヒイラギの葉のとげとげに悪意を見るはわれ
  のみならず


  覗きこむ水面みどりの鎌倉湖白や緋色の鯉の浮く見ゆ
  ぱらぱらと木の葉打つ音雨ならむ足を速むる鎌倉湖畔
  鳥ながら国の未来を憂ふらしとっきょとっきょと啼く時鳥
  思ひ出づる勤めの日々の苦々し青葉の森に鬱ふかくをり