天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

石の歌(1)

寺社の境内にて

 岩が砕けたものが石で、石が粒状に砕けたものが砂ということになる。人類が一般的に石から受ける印象あるいは石に付与する思想がある。具体的には、伝説・物語・信仰・用途などに見られる。和歌や短歌に詠まれた石にも作者の石に対する考え方・思いが現れる。作者の石に対する思いを汲みとって解釈することが鑑賞のポイントになる。


  隠口(こもりく)の泊瀬小国(はつせをくに)に妻しあれば石は
  履(ふ)めどもなほし来にけり   万葉集・作者未詳


  藤波の影なす海の底清み沈著(しづ)く石をも珠(たま)とそ
  わが見る            万葉集大伴家持


  我が恋は千引きの石を七ばかり首に繋けむも神のまにまに
                  万葉集大伴家持
  我が君は千代にやちよにさざれ石の巌となりて苔のむすまで
              和漢朗詠集・よみ人しらず
  玉水を手にむすびてもこころみむぬるくば石の中もたのまじ
               新古今集・よみ人しらず
  たのめつつ来がたき人を待つほどに石に我が身ぞなりはてぬべき
                夫木抄・よみ人しらず