鳶(2)
トビの餌は、動物の死骸、カエル、トカゲ、ヘビ、魚などの小動物であり、カラスやカモメと重なるところもあるので、これらの鳥と餌の奪い合いをしている光景を見かける。観光地では、我々が弁当を食べていると、気付かないうちに上空からさっと手元に飛び込んできて、食物をかっさらっていくので、注意書が張り出されていたりする。小さな子供など何が起きたのか分らないほどに敏捷である。
岬山(さきやま)のさびしきまひる海にいでて鳶みな風に
羽根もてうかぶ 上田三四二
羽搏(う)ちて掠め去りつつ鳶鳴けり澄みたるこゑの油
垂るごと 片山貞美
鳶飛んで天に戻(いた)るといふ言葉心をよぎる老いて
いよいよ 太田青丘
鳶飛んで天にいたると口ずさみ心やうやく鎮まらんとす
太田青丘
鷹たらず鳶と生まれし夕空にあはれ豊かに映えてゐたるよ
馬場あき子
弧を描きとぶ鳶一羽 曲線は直線よりもさらにするどき
伝田幸子