天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

落葉(2)

大磯・高麗山にて

 落葉は冬の季語だが、落葉のついた「落葉の雨」、「落葉の時雨」、「落葉風」、「落葉時」、「落葉掃く」、「落葉焚く」 などが傍題になる。


     拾得は炊き寒山は掃く落葉     芥川龍之介
     落葉掃了へて今川焼買ひに      川端茅舎
     落葉焚き人に逢ひたくなき日かな  鈴木真砂女
     落葉するおとにさめゐるまぶたかな  飴山 實


  落葉してさびしき谷戸といふなかれ物みな冬日に照り輝くを
                       太田青丘
  いきどほり鎮めしわれのむらぎもにくれなゐの落葉いち枚残る
                       福田栄一
  渓谷の隅に積もれる朴落葉寂しき白に冬日溜めるゐつ
                      鶴岡美代子
  さびしきは老か命かかの小猫庭のおち葉を追ひてよろこぶ
                       松村英一
  落葉してあかるくなりし柿畑に運不運なく野良猫あそぶ
                       加古敬子
  わが視野を折り折りよぎる白き猫冬の落葉を渡りゆくらし
                       扇畑忠雄
  落葉の蔭にむくろと見えし蜂一つ日の差す方(かた)に歩み
  始めぬ                 青木ゆかり


  ゆふぐれに薔薇の落葉を踏み歩く僕(しもべ)のごとき蟇を
  あやしむな                森岡貞香


  春光のなかにしきりに落葉する樫の木があり樫の木鮮(あたら)し
                       遠山光