鳶(3)
日本には古代の伝説にトビが出て来る。有名なのは、『日本書紀』において金色のトビが神武天皇の弓の端に止り、その身から発する金色光で長髄彦の敵軍の目を眩ませ、神武天皇に勝利をもたらしたという伝説である。昭和15年発行の記念切手や絵画の題材にもなっている。
ゆったりと鳶は岬の空に舞うわが胸の修羅ともに舞いゆけ
島田和子
とんびの巣ふさりと落ちてここからはもう冬ですと告ぐる
木のあり 梅内美華子
骨太の一の字のごと翼(はね)ひろげ都会の鳶はビル掠め舞う
酒井素子
鳶に吊られ野鼠が始めて見たるもの己(おの)が棲む野の
全景なりし 斎藤 史
天竜の岸近き森に巣をもてばたがひに恐れず烏と鳶は
君島夜詩
声呑みて生徒ら立ち尽くす広島の原爆資料館の空に鳶舞ふ
羽田忠武