天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

初夏雑詠(2)

鎌倉・建長寺にて

 ニュースでも話がでていたが、最近、日本にくる燕の数が減っているらしい。私が住む横浜市のはずれには田園が多いが、空を飛んだり電線に止まって鳴いている燕の姿がめっきり少なくなった。多ければ多いで、あちこちに巣をかけて糞を落されるのには迷惑するが、少なくなると日本の季節感が薄まる感じがして寂しい。


     目にやさし日向水木の若葉なる
     薫風の階かけあがる郵便夫
     半僧坊若葉かなたに雪の富士
     鎌倉の谷戸を忘れずつばくらめ
     園児らを隠すほどなる芥子畑
     実のはぜて籾殻白きからす麦
     相模川昼をもやへる涼み舟
     汀女句碑しろつめ草の原に寝て
     碑を読みて野毛坂下る花水木
     こゑ合せカヌー漕ぎくる入江かな
     潮騒とラジオのこゑの昼寝かな
     どくだみの花にみなぎる力かな
     園児らが里山をくる初夏の声

     
  「花想ひ地蔵」の鉢に石楠花の白きふたつを供へてありぬ
  丈低き木に大玉の石楠花のいくつも咲ける建長寺谷戸
  山門の下に置かれて撫でられて頭つるつる賓頭盧尊者
  海までは2.5キロ道に添ふ赤詰草と白詰草
  園児らがつらなりてくるさまざまのポピー花咲くふれあひ公園
  野毛山に大き碑(いしぶみ)象山は横浜開港の先覚者たり
  初夏の今日の巡視か沖に向け沿岸警備艇は出でゆく
  潮風のベンチに寝ねてラジオ聞く初夏のまぶしき日差の中に
  ガラス戸に魚拓貼り付け客を待つ店にならべる釣具釣餌
  裏店は今日は閉せり看板に卸、小売のさざゑ、はまぐり
  地曳網吊るして水を吹き付くる朝の岸壁江ノ島漁港
  ゆっくりと月は地球を遠ざかりやがて無くなる皆既日食
  海溝の地盤に溜る歪ありはじけて震ふ日本列島
  BS1ニュースの前になつかしきシルヴィ・ヴァルタン
  「あなたのとりこ」