天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

靴(1)

木履

 靴は足を包む形の履物の一種だが、靴底のあることが条件であり、靴下や足袋のような、一枚布あるいはそれに近い構造のものは靴に含めない。人類の歴史において、いつの時代から靴が現れたかははっきりしない。発見された最古のものでは、紀元前3500年ごろの革の紐靴がある。ただ、西洋靴のルーツになったのは、古代エジプトのサンダルとされる。日本においては、奈良・平安の時代の上流階級がすでに履いていた。靴の語源は、朝鮮語の「グドゥ」とされる。


  窓の外を靴音やがて鍵の音この夜半つひに人声は無く
                   植松壽樹
  皮靴を欲しといふ子にああ五月空いろのズックの靴
  買ひやりぬ            小島 清


  今朝もまた靴はくことに苦しみて汗かきながら息づき
  にけり              五味保義


  雨水を吸いたる布の靴やさし歩毎歩毎に水の鳴るなり
                   阿木津英
  きみが靴にわが小さきを並べ置くそれさへ不可思議の
  ごとき朝(あした)よ        今野寿美


  背なか一面皮膚はがれきし少年が失はず穿く新しき靴
                   竹山 広
  落葉(らくえふ)の匂ひふかめてうつり坂ゆきかふ靴の
  ひびきを吸へり         春野りりん