天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

小春

江ノ島沖

 もう時期は過ぎてしまったが、陰暦十月を小春という。陽暦では十一月頃にあたる。春のような晴天の日が小春日である。小春日和、小春空、小春凪 といった言葉もある。


  鳥のかげ窓にうつろふ小春日に木の実こぼるるおとしづかなり
                       金子薫園
    小春日の曇硝子にうつりたる
    鳥影を見て
    すずろに思ふ             石川啄木


  ものなべて忘れしごとき小春日の光のなかに息づきにけり
                       古泉千樫
  小春日の道端で靴を繕へる靴屋はわれに結婚すなと言ふ
                       前登志夫
  脇道も裏の小路も抜けてゆく小春の風は陽に匂ひする
                       根本敏子
  心中の前に爪切ることなどを君に教えし小春日の部屋
                       前田康子


  鶺鴒のつがひ間近にあそべども無関心なる犬の小春日