天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

酒の歌(3)

清酒「備前雄町」わが身辺から

 日本に酒が存在することを示す最古の記録は、西暦1世紀頃に成立した中国の思想書『論衡』。その後は、3世紀に成立した魏志倭人伝(『三国志東夷伝倭人条)の記述にある。西暦720年に完成した『日本書紀』には、須佐之男命が八岐大蛇を退治するために八塩折之酒(やしおおりのさけ)というものを造らせる記述がある。八度にわたって醸す酒という。



  ほんとうの酒がこの世にあった時父もよいにき吾もよいたり
                    山崎方代
  酒飲めば酔ひてたのしくなる友にひとり飲ましめ我は飯食ふ
                    窪田空穂
  騒然と硝子戸に夜はひしめきて自励の酒もかく悲しきを
                    宮 柊二
  寝そびれて夜半の厨に酒含(ふふ)む折からの雨の音聴きながら
                    筏井嘉一
  歌反古にこぼせし酒の濡れあとのとりとめもなきわがものおもひ
                    筏井嘉一
  酒をのむ功徳いかにと言ふは誰(たれ)酒のめば血のめぐりよくなる
                    筏井嘉一
  峡いでて昼のみし酒のさめぎはをほのぼのとおのれあはれがるべし
                    小島 清
  はらわたに花のごとくに酒ひらき家のめぐりは雨となりたり
                    石田比呂志