天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

飯(2)

むすび(わが食卓から)

 麦飯(むぎめし)は、大麦のみ、または大麦と米を混ぜて炊き、飯としたもの。


  つつがなく帰れる吾の飯(いひ)食ふを父は火燵(こたつ)に
  見てゐたまへり             藤沢古実


  顔も手も飯粒(めしつぶ)まみれに食ふさまやこの子は勁(つよ)
  く生ひたたしめむ            筏井嘉一


  黄に濁る河水(かすゐ)にかしぐ飯(いひ)はみてつつがはなしと
  互(かたみ)に書くも           宮 柊二


  めし粒をこぼしつつ食ふこの幼(をさな)貧の心をやがて知るべし
                      長澤一作
  白飯の上に香にたつ紫蘇の実を置きて悲しむ頼むもの無し
                      石田比呂志
  握り飯を食いつつ見ている一滴の水に写れる世界のかぎり
                      佐佐木幸綱