天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

時間を詠む(6)

砂時計

 砂時計の原理は、小さな穴から砂が一定の速度で落ちることを利用したもの。砂時計は特に船で航海する時に重要だったという。揺れに強いからである。
 父や母と一緒にいる時間、恋人と一緒の時間 それぞれに印象が違うものである。


  生れたらあともどりせぬ宿命よ時間はすすむ悔ゆるま
  なしに              筏井嘉一


  時間てふ沼のさざなみ青年は戀のはじめにして老い兆す
                   塚本邦雄
  少し寒い時間を生きてゐる父よ卓上時計二分進めて
                   馬場明憲
  母とゐてふたりの時間のゆるゆるとすすみつつあり
  ゆるやかさ危ふ          森岡貞香


  まだ一年もう一年と数えいる光の粒か時間というは
                  山田震太郎
  裸木の梢に刺さりてゐる月を時間の竿がゆつくり外す
                   岡本光
  時間いま遅遅と進みて見通しの草地ドーベルマン
  陽を浴ぶ             高嶋健一