天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

船の歌(10/10)

ヴェニスのゴンドラ(webから)

 船のゴンドラは、ヴェネツィアの伝統的手漕ぎボートのこと。何世紀にもわたって、主な交通手段であり続けている。観光用のものは運河のタクシーと言える。


  桟橋に泊れる船は帆に風を孕みて夜の白き貴婦人
                 白石トシ子
  東京湾を入りくる船が目標にしたるへそ山と言へば
  親しき            遠役らく子


  若き日はこの湖にボート競ひ漕ぎき古へを偲ぶ心は
  無くて             吉田正俊


  青きボート赤きボートの寄り添ひて夜の川面にちぐ
  はぐに揺る           安田純生


  黒死病の死屍をのせゆく喪の舟としてゴンドラは
  黒く塗られき          葛原妙子


  関門の連絡船に乗りこむや故郷にこしと胸とどろきし
                 鹿児島寿蔵
  遊覧船一つゆつくり下りゆく大川いまも変らぬ光景
                  清水房雄