船のゴンドラは、ヴェネツィアの伝統的手漕ぎボートのこと。何世紀にもわたって、主な交通手段であり続けている。観光用のものは運河のタクシーと言える。
桟橋に泊れる船は帆に風を孕みて夜の白き貴婦人
白石トシ子
東京湾を入りくる船が目標にしたるへそ山と言へば
親しき 遠役らく子
若き日はこの湖にボート競ひ漕ぎき古へを偲ぶ心は
無くて 吉田正俊
青きボート赤きボートの寄り添ひて夜の川面にちぐ
はぐに揺る 安田純生
黒死病の死屍をのせゆく喪の舟としてゴンドラは
黒く塗られき 葛原妙子
関門の連絡船に乗りこむや故郷にこしと胸とどろきし
鹿児島寿蔵
遊覧船一つゆつくり下りゆく大川いまも変らぬ光景
清水房雄