天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

乗りもののうたー船(7/7)

  若き日はこの湖にボート競ひ漕ぎき古へを偲ぶ心は無くて

                       吉田正俊

*「この湖」とは、近江朝を象徴する琵琶湖であろうか。

 

  青きボート赤きボートの寄り添ひて夜の川面にちぐはぐに揺る

                       安田純生

*ちぐはぐ: 二つ以上の物事が、食い違っていたり、調和していなかったりするさま。

 

  黒死病の死屍をのせゆく喪の舟としてゴンドラは黒く塗られき

                       葛原妙子

黒死病: 14世紀中葉にヨーロッパを襲った腺ペストを代表とする疫病の通称。患者の皮膚が皮下出血のために黒ずんで見えるのがこの名の由来。

 

  関門の連絡船に乗りこむや故郷にこしと胸とどろきし

                      鹿児島寿蔵

*関門: この歌では、下関と門司との間の関門海峡をさす。

 

  遊覧船一つゆつくり下りゆく大川いまも変らぬ光景

                       清水房雄

 

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ゴンドラ