天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

衣のうたーシャツ・下着(1/2)

 シャツは英語のshirtからきているが、その語源は古ゲルマン語のskurtaz(短く切る)にある。丈が腰あたりまでしかない短めの衣類がこのように呼ばれてきた。(百科事典から)

  旅を来て埴(はに)の湯浴みし身はすがし君を訪はむとシャツを取り替ふ
                       鹿児島寿蔵
*「埴の湯浴み」とは、きめの細かい黄赤色の粘土でできた風呂に入った、ということだろう。

  干し終へしシャツはためけば幻の帆船を見に海へゆくなり
                        畑 和子
  汗のシャツを汗のサイゴンに脱ぐときの祖国への愛みだりがわしき
                       佐佐木幸綱
*結句「みだりがわしき」の気分が分かりにくいが、やたらに日本が恋しくなった、ということか。

  冬の夜に脱ぎゆくシャツのはじく音くるしみを剥がす音とおもひき
                       上田三四二
  雪の中帰りて終い湯に洗濯すシャツ一つ色異なる靴下三つ
                        田井安曇
  汗のシャツ枝に吊してかへりきしわれにふたりの子がぶらさがる
                        時田則雄
  一枚の木綿のシャツの畳みかたを違へるごとく愛しあひをり
                        辰巳泰子
*互いの愛撫の仕方が違っていることを詠んだようだ。

  夏着たる夫のシャツを干しあげて開くる日のなき箱に納めぬ
                        立川敏子
*夫は亡くなってしまったのだろうか。

  このシャツを着ているときはなぜだろういつでも向かい風の気がする
                        穂村 弘

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シャツ