天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集からー春(20/21)

平成二十八年 

     菜の花や路傍に夢のあるごとく 

     江ノ電や七里ケ浜に風光る

     鎌倉や春日をこばむ牢格子

     犬猫の慰霊碑かこみ梅真白   

     うららかや束子供養の小天神  

     春雪のかがやく富士を目の当たり 

     かたくりの花にはらばふ山路かな     

     ひき当てし大吉むすぶ柳かな        

     倒壊の家屋にまどふ里燕

     なつかしきこゑ空にあり初燕  

 

平成二十九年 

     あらためて過去振り返る古希の春

     年とりて花のいのちをうらやめり

     立春の日射しにねむる電車かな 

     不用なる火の見櫓か春の富士  

     砲撃のとほくとどろく曽我の梅 

     津波来し海を見下ろす桜かな

     出稼ぎの思ひ出語る花見かな

     大八洲桜見てみな浮かれだす

     越して来し日を思ひ出す辛夷かな 

     夕食に花見弁当老夫婦   

     髪洗ふごとし柳に雨やまず 

     み仏の胎内に入る長谷の春

 

平成三十年 

     いただきて夫婦涙す年賀状

     復興を待てず見に行く桜かな

     梅園を笑はせてをり猿回し 

     きさらぎの朝日まぶしむ熱海の湯 

     わが妻の白髪かなしむ桜かな

     見上げたる花のむかふに天守閣 

     太陽の笑みをもらひて福寿草

     凧ふたつ少年野球を見おろせる

     あらたまの朝の鏡をまぶしめり

 

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江ノ電